ぬくもりと手のひら

 

 

新年を迎えて、もうすでに2月末になってしまいました。

何だかバタバタしていて、地味に忙しい日々を過ごしています。

私の気持ちが忙しいだけなのですが。。。

でも、よく考えてみると、

被害後、そんな毎日を送り続けていたようにも思いますが、

この自粛期間に、気合を入れて自分の気持ちと向き合ってみました。

 

トラウマの事

 

よく私が受ける質問の中に、

 

「当事者の相談を受けていて、辛くなる時はないですか?」

 

という質問があります。

答えは、もちろん「辛くない」なのですが、

何故、辛くないのか?って考えてみました。

過去記事を読み返していると、とても辛い時期があったのは事実ですが、

今現在は、そんなに辛くはないです。

被害のトラウマを克服する為に、

何かしたかと言えば、特に何もしてはいません。

でも、どうやら私はトラウマを克服する免疫を持っていたみたいです。

それに気が付いたのは、久しぶりに新年にあった、

会社の部下達(すっごい高齢)との

何気ない会話でした。

 

何気ない会話の中のキッカケ

 

部下といっても、正確に言えば父親の部下です。

父がすい臓がんで急死した為、

後継者が決まるまでの短い期間、

母の代わりに私が跡を継いでいたため、

その短い期間、私の部下となったのです。

 

みんなで集まって、父の話でひとしきり盛り上がった後、

私の近況の話になりました。

父親の会社は現在も存続しているため、

会社を退職した後も、よくみんなとは会っていたし、

また、私が小さい頃から知っていて、家族みたいに付き合ってきたので、

みんな私の被害の事、被害後の事、今の活動の事は知っています。

 

そんな事もあり、その日ついつい甘えてしまい、

「頑張ってるけど、なかなか理解してもらえないんだよね。。。

私の力不足なのは、よくわかってるけどさっ。。

被害を受けたのに強いから?でも傷ついたんだよ。

ホントはさ。。」

こんな風にごちゃごちゃ愚痴っていると、

 

「でも、お前って、昔からそんな感じだったよ。」

 

そんな言葉を言われました。

 

「どういう事?」

と、突っ込んで聞いてみると、

 

「昔からさ、負けず嫌いで、悪は絶対に許さなかったじゃん。」

「そうそう、小さい時からガキ大将だもんな。」

「パパの後継いだ時だって、他の会社の職員怒鳴り上げたりしてたし。」

「どんな事も絶対に出来ないって言わなかったな。」

 

こんな風に、次から次へと懐かしい記憶と一緒に

優しい過去の出来事を話してくれたのです。

 

被害の記憶と一緒に閉ざしておいた思い出を、

小さな頃から囲まれていた温かい空気の中で、

ゆっくりと、みんなと一緒に少しだけ溶かして、

被害に遭う前の思い出を取り出してみました。

 

そうだった。。。

私は小さい頃から強かった。

ものすごく負けず嫌いで、弱い者いじめも大嫌いだった。

父が死んで、私の心も死んでしまうほど悲しかったけど、

父の会社の部下やその家族、自分の家族の事を守る為なら、

どんな事でも耐え抜けたな。。。

バブル期の有象無象の建設業界を生き抜く事に比べたら、

被害のトラウマを克服する方法なんて、

いくらでも知ってるな。。。

 

その事に気がついたら、

自分が被害にあったという自己憐憫よりも、

頑張って生きて来た私の過去を汚された事、

自分の会社を馬鹿にされた怒りの方が勝って来ました。

そして、改めて、性犯罪や性暴力の悪質さに対して、

「許せない」という気持ちが強くなりました。

性犯罪は、こうしてなんの関係もない人の人生を変える事だから、

私は絶対に許してはいけないのだと、闘って生きている理由と、

被害の事を過去の出来事として捉え、

トラウマを克服している事を理解しました。

 

どうして被害に巻き込まれたのか?

 

上記に記してきたように、

私は、たくさんの人の愛情と、

そして無償のぬくもりを受けて強く育ってきました。

 

「弱い者いじめをしてはいけません。」

 

どこからどう見ても間違っていないこの道徳観を

加害者は実に利用したのが原因です。

「嫌だ。」「やめて。」

性行為に伴うそうした拒否の言葉を

「弱い人の言葉を聞いてくれないなんて、

全然正しくないじゃないか。」

こんな風にすり替えて、加害に及びました。

それは、私だけでなく、

多分、多くの被害当事者に共通する状況だと思います。

特に、空気のように男尊女卑の風潮が根付いているこの国では、

また、忖度が美徳とされてるこの国では、

こんな加害者は山ほどいるし、

それを気にもとめない人も大勢います。

 

私にしか出来ない事だから

 

だから、こんな社会だから、

相当な事があっても潰れない強さを持っている私は、

活動をしているのです。

 

「じぃじ達はさ、お前にね、本当に感謝してる。

まだ20歳そこそこだったお前に、

随分、過酷な思いをさせたって今も後悔してる。

女の子なのに、建設会社の経営させて、遊ぶ時間も削らせてさ。。

申し訳なかったって、今でも思ってる。

今のお前の事を考えるとさ

代われるもんなら、代わってやりてぇって思ってる。

それでもこうして頑張ってるお前をみてるとさ、

本当に誇りに思ってるんだよ。」

 

たくさんの優しい手のひらのぬくもりに支えられて、

私は元気に生きてきました。

そして今もなお、どんな私でも包んでくれる手のひらとぬくもりを

決して悪の道具として利用されないように、

私は活動をして生きています。

 

 

 

 

 

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