春の桜と私の涙

 

 

被害の現場から逃げ出した日から、

もう3度目の春を迎える。

逃げ出した時も春だったので、桜は私にとってあまり綺麗だとは思えなかった。

桜を見るたびにフラッシュバックを起こし、

吐き気とともにその記憶が鮮明に思い出してしまうので、

この季節、ずっと外に出る事ができず、

いつも家の中で布団をかぶって、ただただ桜が散るのを待って過ごしていた。

 

涙が出ない

 

性犯罪の被害、そしてそれに伴う二次被害は、

思い浮かぶだけでもぞっとするものなのに、

被害後、私は涙が出なかった。

被害の記憶をとても親しい友達に話していても、

じんわり涙がにじみはするけど、

心から涙があふれ出て、思い切り泣けなかった気がする。

それはどうしてなのか、自分でもよくわからない。

でも多分、心のどこかで私の流す涙なんて、

きっと汚れていて、価値のない涙だと、

私自身が自分を許せなかったのではないかと今では思う。

忌まわしい記憶と共に、涙を流す事も忘れてしまおうときっと思ったんだろう。

性犯罪と共に起こる二次被害のために、

もう傷つきたくないと、私の心が悲鳴をあげ続け、

涙の代わりに、自傷をしては血を流していたのだとも思う。

 

命と引き換えに

 

被害後、私に生きてほしいと、

たくさんの人が支えてくれた記事を書いてきた。

私が被害直後から支え続けてくれている人達がいる。

それは、神奈川県のワンストップセンターの相談員さんたちである。

行政で受けた二次被害や、裁判で闘い疲れて死んでしまいたい時、

被害の記憶が夢に出て、どうにも眠れない夜に、

じっと私の話に耳を傾けてくれた人達。

そんな優しい人達に守られて、今日の私がいる。

相談員さんと話した後は、なぜだかぐっすりと眠ることができた。

その時の事を振り返ってみると、その優しい声が、

私の生きる力を引き出してくれていたのではないかと思うのだ。

二次被害に傷つき、死んでしまおうと思って、

いっぱい自分を傷つけるのだけれど、

相談員さんとの会話や声を思い出すと、

 

「こんなに大切にしてもらっている私を傷つけるなんて許せない!」

 

私ではなくて、相談員さんたちを傷つけられているような感じがして、

無性にに腹が立ち、どうせ死ぬなら優しい人達のために命を使おうと思うようになったのだ。

そう、私の命と引き換えに優しさや温かさを性犯罪被害当事者の方に捧げようと思えたのだ。

 

現在の私

 

 

私は今、神奈川県社会福祉協議会のセルフヘルプグループ(SHG)となり、

横浜駅のすぐ近くのかながわ県民センターの相談室にいる。

横浜駅のすぐ近くの15階から、首都高速を見下ろせる静かで安全な相談室で、

ハンドメイドのピアサポートや、電話や来所のピアカウンセリングをしている。

そして、神奈川県社会福祉協議会のSHGになった事で、

様々な団体の方たちと出会い、協力してくれる味方がいっぱいできた。

近くには人権啓発活動をしている「虹色の種」や、

デートDVに特化している「エンパワメントかながわ」もある。

 

3年前にこんな未来なんて想像できただろうか。

来る日も来る日も、死んでも良い理由を探していた私には想像できなかった。

 

横浜の桜とあふれる涙

 

去年、中央労金の助成金プログラムを受けて、

「ハンドメイドで繋がろうプロジェクト」を企画し、

あっという間の1年だった。

かながわ県民センターからみえる横浜の桜をみて、

優しい相談員さんにお礼を言いたくて、

久しぶりに電話をかけて、私の近況を報告したら、とても喜んでくれた。

 

「私たちにとって、本当にうれしい報告をどうもありがとう。」

 

その優しい声を聴いたら、電話をきった後で、

被害後初めて涙があふれてきた。

久しぶりにあふれる涙はあたたかくて、次から次へと流れて止まらなくなった。

ぽろぽろと流れた涙のおかげで、桜の花への嫌悪感も流れたのか、

本当に残り少ない桜が本当に綺麗に見えた。

 

 

*かながわ性犯罪、性暴力ワンストップ支援センター

かならいん

 

 

 

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